何度も読み返したくなる、そしてすぐに読めるおすすめ短編小説5つ

こんにちは。モトです。

社会人になってから、まとまった時間を読書に当てることがなかなかできなくなりました。それでも小説は読みたい。

そんなときに、短編小説に出会いました。長編小説しか読んでこなかった僕ですが、いまでは短編小説にハマりました。長編もいいけど、短編小説にもたくさん良い作品がありますよ。

1.ヴィヨンの妻 太宰治

 

 

 

 

 

 

ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

人非人でもいいじゃないの。

私たちは、生きていさえすればいいのよ。

by ヴィヨンの妻、太宰治

太宰治は、「人間失格」で有名ですよね。僕は26歳になるまで、太宰治の作品は「人間失格」と「走れメロス」しか知りませんでした。

とても惜しいことをして生きてきたんだなと、いまは思います。良い作品に出会うのに、遅いも早いないと思うんですけどね。

あらすじ

「ヴィヨンの妻」は肝の座った奥さんの話です。 昔ながらの御しとやかで、男の一歩後ろを歩くような奥さん。酒飲みの旦那とまだ幼い子を持っています。

ある日の夜、いつものように酔っぱらって旦那さんが帰ってきます。

ただ少し普段と違っていて、ぜいぜいと息を切らしていて、なんだか落ち着きもなく、変に優しい素振りをみせたりします。

奥さんは気味が悪いなと感じながらも、そっけなく対応します。

そこに一組の50代くらいの夫婦が尋ねてきます。話を聞くと、旦那さんが、この夫婦が営んでいる居酒屋からお金をくすねてきたと言うのです。

モト
とんでもない男ですよね。まだ若い奥さんと幼い子どももいるのに。

旦那さんは、ナイフで威嚇しながら家から飛び出します。

出るとこまで出たなと思った夫妻は警察に通報しようするのですが、奥さんが引き止めて、代わりに返済すると言いはじめます。

見るからにお金のなさそうな家に住んでいるのですが、若い奥さんに頼まれると、その夫婦は何も言えなくなり了承してしまうのでした。

モト
人情がありますねえ。ここまでやられたら、もう終わりな気がします。

結局、翌日、返済口が見当たらなかった奥さんはその夫婦が営む居酒屋で働きたいと言いだします。

旦那さんは、酒に溺れ、女の子と遊んでばかりいて、まだ小さな子どもがいるっていうのにお金をちっとも入れてくれない。

そんな苦しい生活のなかにユーモアをもって生きている彼女はたくましく、そして美しい。こんな女性を奥さんにもらいたい。

青空文庫なら「ヴィヨンの妻」は 無料で読めます。

2.桜桃 太宰治

 

 

 

 

 

 

桜桃 (文庫)

 

また太宰治の短編です。「桜桃」はとにかく冒頭を読んで頂きたい。いきなりメッセージ性の強い一文がきます。

子供より親が大事、と思いたい。

by 桜桃、太宰治

普通に考えたら、子どものほうが大事ですよね。将来もあるわけだし。

ただ、「思いたい」と書いているところに心の弱さが表れている。思ってはいけないとこだけど、そう思わずにはいられない。

この短編はすごく短いので、簡単なあらすじを書くよりも、読んで頂いた方が早いと思います。すごく面白いのでぜひ読んでみて下さい。

青空文庫なら「桜桃」は 無料で読めます。

3.Revenge of the Lawn  by Richard Brautigan 

 

 

 

 

 

 

Revenge of the Lawn

The large ocean in the world starts or ends at Monterey, California. 

by Pacific Radio Fire, Richard Brautigan

リチャード・ブローディガンの短編集は、とても奇妙な話が多くて読んでいて楽しいです。

この短編集はひとつの作品がとても短いので(この作品は2ページで完結します)、洋書に慣れていない人でも複数の作品を読み切ることができます。

とは言っても所々で複雑な言い回しをしているので、そういう時は読み飛ばすか、藤本和子さんが訳した本を読んで見て下さい。

あらすじ

この短編集の中で僕が最も好きなのが“Pacific Radio Fire”です。

主人公は、最近妻に出ていかれた男と一緒に太平洋へ出掛ける。そこで、酒を飲み、ラジオで音楽を聴く。話を聞いていると、その男は何を思ったのかとつぜんラジオに火をつけはじめます。

柴田元幸さんの「翻訳教室」でも採用されている作品です。合わせて読んでみるのも面白いと思います。

4.クリスマスの思い出 トルーマン・カポーティ 村上春樹訳

 

 

 

 

 

 

クリスマスの思い出

僕が初めて読んだ村上春樹さんの翻訳がカポーティの「クリスマスの思い出」です。押し絵も印象的で、素晴らしい一冊に仕上がっています。

あらすじ

物語は、田舎に住む7歳の僕と60代の従姉妹のスックがクリスマスを祝う話です。

スックは、はたから見るとくせが強いおばさんです。生まれた町からは、一度も出たことがないですし、読む本は、聖書か漫画くらい。

ご想像の通り、友達は「僕」くらいしかいないようです。そんな二人が、自分たちで材料を調達し、ケーキを作り上げ、そしてクリスマスを祝います。

最後の2ページはとても感動に包まれます。とくに凧との比喩が美しく感動的です。ここは、ぜひ原文を読んで頂きたい。

この部分はだれも日本語に翻訳できないのかもしれません。少なくとも僕にとってはと言うことになりますが、村上春樹さんの訳でも、うまく表現できていないなと感じました。

5.象の消滅 村上春樹

 

 

 

 

 

 

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

町の象舎から象が消えてしまったことを、僕は新聞で知った。僕はその日はいつもと同じように六時十三分にセットした目覚まし時計のベルで目を覚まし、台所に行ってコーヒーをいれ、トーストを焼き、FM放送のスイッチを入れ、トーストをかじりながら朝刊をテーブルに広げた。

by 象の消滅、村上春樹

村上春樹さんの小説より、エッセイや翻訳本の方が僕は好きなんですが、「象の消滅」は、めっぽう面白いです。

往々にしてそうなのですけど、有名な作家の作品は、初期のものがずっと面白いです。

この「象の消滅」は1985年に発表された短編集で、いまから20年近く前の作品になります。

あらすじ

この短編集の中でも、「象の消滅」は最高です。物語はタイトル通り、象が突然消えてしまう話です。

小さな町の象徴だった象が、ある日、彼女の飼育員とともに消えてしまう。象の最後の目撃者だった「僕」は、その後、深く考え込んでしまう。

冒頭の書き出し一つで、主人公の性格というか、ライフスタイルが想像できると思います。

 

あとがき

僕は「物語の力」というのを信じたい。うつ病を経験して、そのとき物語に救われてから、そう思うようになりました。

当時は「カラマーゾフの兄弟」を読んでいて、まるで自分のことを書かれている気がしました。

そして気持ちがすーっと楽になってきて、「まだ生きられる」と思いました。どうしてかは分からないけど。

NHKのハリウッド白熱教室で、講師の人が言っていたのですが、「人は記憶を物語として思い出す」そうです。

たしかにそうかもしれない。そう考えると、物語を読んでいれば、失われた過去の記憶を思い出せそうです。

自己啓発の本やビジネス関連の本ばかり読んでいた時期もありました。でも結局のところ、どの本も僕の体に身につくようなものではありませんでした。

スキルが上がる専門書などは役に立つものあったけど。

世の中には、小説は一切読まない人もいるようです。惜しいことをしているなあと個人的には思います。目にはみえないけれど、物語にはすごい力がある。

それに物語って単純に面白いですよね。




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ABOUTこの記事をかいた人

ピースボートに乗船して17カ国で400人の外国人にモットーを聞いてまわりました。 旅の醍醐味は人との出会いだと信じています。 村上春樹とパールジャムといぬが好き。走ったり泳いだりしてます。